最大のイノベーションは内面が変わること(野村さん)


21世紀People最初のお話は、イノベーション・ファシリテーターの生みの親でもある野村恭彦さん。「野村さんがいれば大丈夫!」どんな対話の場であっても、参加者にそう思わせるイノベーション・ファシリテーターの第一人者。



野村恭彦氏 プロフィール
イノベーション・ファシリテーター
 株式会社フューチャーセッションズ 代表取締役社長、K.I.T.虎ノ門大学院 教授(ビジネスアーキテクト専攻)、国際大学グローバルコミュニケーションセンター(GLOCOM) 主幹研究員。博士(工学)。  2012年6月、企業、行政、NPOを横断する社会イノベーションをけん引するため、株式会社フューチャーセッションズを立ち上げる。 




この日はイノベーション・ファシリテーター講座7期の最終日。打ち上げで大盛り上がりの会場の隅っこでインタビューを開始しました。


◎イノベーション・ファシリテーターって、なんですか?

ーーーまずイノベーション・ファシリテーターとは、改めて何ですか? 全く知らない方に向けて、野村さんの言葉で教えてください。



野村さん:

イノベーションとファシリテーター(※一般的には会議などの進行役)が両立する人のことですね。社会を変えたい!という想いを実現させるために、『問い』を作って相手の想いを引き出せる人。そのためにあらゆる人の気持ちに寄り添って、焦らずに丁寧に対話をする人です。



 ーーーとっても優しい存在なんですね。野村さんにとって「イノベーション」とはどのように捉えているのですか?



 野村さん:

「新しい常識ができること」です。大雑把に言うと、 変わり方は2つあるんですよ。
環境から変わる場合と、人の内面から変わる場合 。前者は技術革新のような、新しい商品が出て、環境から行動が変わること。後者は人の意識が変わって行動が変わること。誰かがイノベーションを起こすから変えるのではなく、内側から変えられるんだっていうことですね。例えば水の節約やリサイクルもそうですよね。



ーーー 野村さんの内面が大きく変わるような出来事はあったのですか?


 
野村さん:

自分の中で大きく変化があったのは3.11の震災がきっかけです。

震災直後にISHINOMAKI 2.0の方と対話をした時、「社会のインフラが全部なくなった時に、社会をゼロから作ることがどれだけ面白いかワクワクしている」と仰っていたんです。ああ、こういうところからイノベーションは起こるんだ、と確信しました。だって、前提がなくなっているんですよ!

ボブ(※社会変革ファシリテーターの第一人者ボブ・スティルガー氏)が震災直後にSkypeで「日本の成功の指標が変わる時だ。社会を再創造しなければならない」と言っていたのを強烈に覚えています。それ以降はそのプロセスにかかわっている意識の変化の方が重要だって本当に信じているんですよ。



ーーー そんな出来事があったんですね。今振り返ると、必然のようにも感じられます。



野村さん:

だからより一人ひとりが社会は自分が作っているだって思える経験を増やしていくことがすごく大事だなって思っているんです。

でもそれって面倒くさいことなんです。なんでもかんでも気になるから。 例えば自分がこの町の市長だったりするとこの地域の経済、子育てとか全て自分で考えますよね。でも、そういう感覚で発想できたら楽しい社会になると思うんですよ。

少なくとも、そういうことを考えたいときに考えられる状態があるとよりよい社会になると思うんですよね。



写真:「新しい働き方」をテーマにフィッシュボウルという手法を使って対話中の受講生のみなさん




◎出世しない新しいリーダー像

ーーーそんな野村さんの内面のイノベーションからちょうど5年。どんな変化を感じますか?

 

野村さん:

震災の後、2012年に株式会社フューチャーセッションズを作り、神田昌典さん(経営コンサルタント、作家。株式会社ALMACREATIONS 代表取締役)と初めての対話の中でイノベーション・ファシリテーター講座を作ることになりました。まもなく8期も始まり、受講生は既に100名を超えています。受講生のみなさんは何かしらの「決意」を持って集まっています。おかしな表現なんですが、講座設立当初に想い描いた以上の未来(現実)になっているんですよ…。

何が正しいか分からないけど僕が「こうしたい!」と思っていた気持ちと、「やりたい!」と思っていた気持ちの人が潜在的に多かったんじゃないかなと今は思いますね。

そしてイノベーション・ファシリテーター講座に来る人たちは一般論に言う仕事ができる人が多い。考えることが面倒くさいのではなくて、疑問があったら自分でやっちゃおうと思う人が多くて、結果的に日本を変えるようなリーダーのような人たちが集まっているんですよ」 


---どんなリーダー像なんですか?


野村さん:

組織や社会を大きく変えるためには、究極的には知識やスキルを持っている人がキーパーソンではない。要は質問しまくる人が組織にいるとか、あるいは誰かが困ったことに対して全部吸い取る人が重要。自分の成果なんてどうでもいい、みんなの仕事を手伝うんだ!って人がいれば全体がうまくいく。全体最適を目指すために捨て鉢になれる人。だから相対的評価の世界ではイノベーション・ファシリテーターは出世しないんですよ。


え、出世しないんですか?!



野村さん:

だけどトップはそういう人を見ている。だって全体を高めているのは「あいつ」だって分かっているから。「自分が自分が」っというのではなくて、「みんながみんなが」と言っている人がちゃんとした手法論をもって全体を動かしていくっていうのができると楽しいじゃないですか。

みんなが競争しているのではなくて、みんなが協力しあう社会ができるから。そんなリーダーがいたらいいなと思っていますね。


ーーー縁の下の力持ちですね。ただ、これからますます、一人ひとりの意見が多様化していくと思っています。どのように皆を引っ張っていくのが、イノベーション・ファシリテーターの役割なんでしょうか?



野村さん:
みんな基本的に同じ方向を向いていると思っているんですよ。単にそこにいくプロセスがみんな違うことを言っているだけで。 

二人一組で対話して10年後の夢の話をすると、必ず全員が全員の夢を応援するんですよ。それが僕らの持っているメディアの「OUR FUTURESであり、「THE FUTURES」ではない。僕たちみんなの未来。

だからこそ大切なのは2つあります。遠くの未来のビジョンと、今何の原則に基づいて行動しているのか、その原則を一緒に作ることがすごく大事です。 同じ原則をどうデザインしていくのかが、イノベーション・ファシリテーターの最大の腕の見せ所ですね。 





◎新しい言語が未来を創る

---イノベーション・ファシリテーターとして、これから野村さんはどんな未来を創っていきたいですか?


野村さん:

僕は未来を創るのは「新しい言語」だと思っています。

例えば新しい働き方について話していたとして、今までは「仕事は辛いことへの対価」と思ってたいとする。でもそうでなくて「仕事は誰かを幸せにするためのもので、相手もその仕事を続けられるように応援してるためにお金を払っている」と思うと、同じ行為であっても意味が変わってきます。新しい言語をつけることによって概念が変わるんですね。



ただ大切なのは、「新しい言語」で呼んだものが「新たな効果」を生み出しているって証明をすることです。そこが僕らのチャレンジ。単に「このやり方の方がいいに違いない」と決めつけるのではなくて、本当にいいやり方を見つけて行こうという誠実な態度が大切。そのために研究や実験をして、今までとはちがう僕らのようなやり方で確かめていきたいんです」


ーーー今もこの大きな実験のプロセスの真っ最中なんですね、そう考えるとワクワクします!



◎イノベーション・ファシリテーターに必要な4つのスキル

ーーーでは、最後にこれからイノベーション・ファシリテーターを志す方に向けて、必要なスキルを4つ教えてください。



野村さん:

  1. とりあげようとしている問題について、今世の中でどんなことが言われているか調べる力。 自分のできる範囲でもインタビューをするとか、何かしら論点を導き出せる力。

  2. それを力強い問いに変えて、他の人を誘える力。問いを創ることと人を誘えるっていうのはすごくつながっています。

  3. ユーモアがあって楽しい場を作りつつも、極めて論理的に対話を導いていく力 。楽しんだけどそのファシリテーターに任せておけば話が絶対にぶれない。時を忘れて話していたんだけどいつのまにかちゃんとアウトプットにつながっている、という信頼感。

  4. いいアイディアだと思ったら、本気でそれを実行しようとする意志力。いいファシリテーションをしようとするとそこで安心するけど、本当にイノベーション起こそうとか社会を変えようとする人はアイディアを出すのが目的ではなくってそれによって変化を起こすことが目的なのでその意志をどうやってステークホルダーたちに伝えたり、あるいは自分が行動をもって示したりするか。非常に重要ですね。


ーーー・・・すごく高度なスキルなんですね。(ため息。。。)



野村さん:

簡単ではないですけど、どんな仕事だって高度ですよ。
イノベーション・ファシリテーターはまずやり方を理解して、考え方を分かった上で、それを繰り返す。実践していきながらお互い学び合って、そうやって熟達していくんだと思うんですよ。

朗報はこのコミュニティはすごくおせっかいなので、自分で全部できなくても支え合える。問いをつくるところはステークホルダーがいればステークホルダーが教えてくれるし。そういう意味では他人の力をうまくつかって進めていくことでもあるんだよね。



ーーー確かに、イノベーション・ファシリテーターは自分の意見を主張するでもなく、受け身なだけでもない、不思議なバランス感覚だな、と感じます。



野村さん:
インタビューもファシリテーションと同じです。相手のことを相手以上に理解しようとすることが大切。まずは相手の引き出しをたくさん開けて、一つ決めさせてそこからプロトタイプしていくんです。インタビューのスキルも磨いていくように頑張ってくださいね!



ーーーはい!(最後はインタビューのアドバイスまで頂いて、大変恐縮です!)



感想:
初回に野村さんのインタビューとだけあって、言葉を受け留めるだけで精一杯でした。改めてこうして文章をまとめた時に、やっと理解することができたほど・・・。お話を聞いた中での新たな発見は「イノベーション」の捉え方。イノベーションとは、新しい何かを生み出すことだとばかり思っていましたが、内面から変わるという意味も加わると、なぜ自分はイノベーション・ファシリテーターに魅力を感じているのか府に落ちました。大きな外側の変化の前には必ず内側の変化があるだろうと思っていたからです。野村さん、貴重なお話、本当にありがとうございました!


野村さんが講師のイノベーション・ファシリテーター講座 第9期が2017年1月28日より始まります! 

事前の無料説明会もありますので、興味ある方はぜひ足を運んでみてください!

◉イノベーション・ファシリテーター講座 第9期 体験セッション 2016.11.04


◉イノベーション・ファシリテーター講座 第9期 説明会 2016.11.10


◉イノベーション・ファシリテーター講座 第9期 説明会 2016.11.22


◉イノベーション・ファシリテーター講座 第9期 体験セッション 2016.12.07


◉イノベーション・ファシリテーター講座 第9期 説明会 2016.12.21



インタビュー日:2016/09/10

聞き手:大藤直子



21世紀People

自分を変える、そして社会を変えていく。 イノベーションファシリテーター100人のストーリー。

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